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【水ビジネスとは?①】世界の水問題解決に貢献する成長市場!

学生向け(業界分析)
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今回私が分析した業界は水ビジネスです。「水ビジネス」と聞いて怪しいと思った方はいないでしょうか。「この水を使って野菜を洗うと毒素が抜ける物質を売っているのかな?」などそんなことを思う方もいるかもしれません。しかし、そのような怪しいビジネスではなく「水ビジネス」は、れっきとした市場なのです!

1. 水ビジネスとは何か?

1-1. 水ビジネスの定義と範囲

水ビジネスとは、水資源の開発、供給、管理、処理など、水に関わるあらゆる事業活動を指します。これらの事業活動は、私たちの生活や産業活動に欠かせない水を安定的に確保し、安全な状態で供給することを目的としています。また、水資源の有効活用や水環境の保全にも貢献しています。

1-2. 水ビジネスが注目される背景

世界人口の増加や経済発展に伴い、水需要は年々増加しています。一方、気候変動の影響で水不足や水質汚染が深刻化しており、水資源の確保と水質の維持は、世界共通の課題となっています。こうした背景から、水問題の解決に貢献する水ビジネスは、世界的に注目を集めています。

1-3. 水ビジネスの市場規模と成長性

2019年の世界の水ビジネス市場規模(WaterDatayより富士経済が作成)

世界の水ビジネス市場規模は、2019年には約72兆円に達し、そのうち、上水が34%、下水が40%と合わせて70%近くの割合を占めています。また、業務分野別シェアの63.5%が維持管理で占められています。日本では水道管の老朽化が問題となっていることが知られているので世界の水ビジネスでも同じような状況に陥っているかもしれません。このことから、今後も年々拡大していくと予測されています。特に、新興国では人口増加や経済発展に伴い、水インフラ整備の需要が高まっており、大きな成長が見込まれています。

世界の水ビジネス市場の分野別推移(WaterDataより富士経済が作成)

また、2030年には112.5兆円の市場規模となっており、その中でも下水設備は29.6兆円を占めています。
2025年の下水設備は18.6兆円であるので5年間で10兆円も増加しています。
2030年に向けて、下水設備市場はさらなる拡大が見込まれます。特に、AIやIoTなどの最新技術を活用したスマート下水道の導入は、効率的な運用管理やコスト削減を実現し、市場の成長を牽引する可能性があります。

一方、下水設備市場の成長には、いくつかの課題も存在します。例えば、高度な技術を持つ人材の不足や、地方自治体の財政難などが挙げられます。これらの課題を克服し、持続可能な下水インフラを構築していくためには、官民連携による取り組みや、新たな資金調達方法の検討などが重要となるでしょう。

下水設備は、私たちの生活環境や健康を守る上で欠かせない社会インフラです。2030年に向けて、下水設備市場はさらなる発展を遂げ、安全・安心な社会の実現に貢献していくことが期待されます。

2. 水ビジネスの主要な事業分野

水ビジネスには、様々な事業分野が存在します。ここでは、上下水道と水資源管理について紹介します。

2-1. 上水道事業

上水道は、水を飲用に適する水として供給する施設です。上水道事業は、飲料水を家庭や事業所に供給する事業であり、浄水処理、水道管敷設、水道メーター設置などが含まれます。

水道局職員の方が、真剣な表情で水道メーターをチェックしているところを見たことはありませんか? それも大切な上水道事業の一つです。普段何気なく見ているメーターですが、正確な検針は、安定供給に欠かせません。

2-2. 下水道事業

下水道事業とは、家庭や工場などから排出される汚水や雨水を収集・処理し、河川や海などの公共用水域に放流する事業です。これにより、公衆衛生の向上、生活環境の改善、水質汚濁の防止を図り、快適で健康的な生活環境の維持することができています。普段は私たちには見えないのですが、私たちに生活には欠かせないものです。また、下水道管渠の整備下水処理場の高度化など、さらなる発展が求められています。

2-3. 水資源管理

文部科学省は水資源管理を「水資源、土地資源、その他の関連する資源の調和的な開発及び管理を促進するためのプロセス」と定義しています。さらに自然系人間社会の2つのカテゴリーに分けることができます。

3. 水ビジネスにおける日本の強み

日本は、世界でもトップクラスの水処理技術や水道事業運営のノウハウを有しており、水ビジネスにおいて大きな強みを持っています。

取扱製品・技術・サービス別にみた日本企業の売上高(単位は億円)

経済産業省のデータによるとプラント・エンジニアリング分野では、海外売上高が国内売上高を大きく上回り、869億円を計上しています。

また、薬品・ろ過材・機器・装置分野においても、国内5,250億円、海外1,293億円と堅調な売上高を示しています。

このことから、日本の強みは高度なプラント・エンジニアリング技術薬品・ろ過材・機器・装置にあると考えられます。また、日本の水処理技術の高さが世界的にも評価され、関連機器や資材の輸出にも繋がっていることを示唆しています。水処理施設の設計・建設・運営において、日本の技術力とノウハウは世界的に高く評価されており、新興国を中心に多くのプロジェクトを受注中です。

さらに、運転維持管理サービス分野においても、海外売上高が年々増加しており、2019年度には552億円に達しています。これは、日本企業が建設した水処理施設の運営・維持管理を請け負うケースが増えていることを意味し、日本の技術力に対する信頼の高さがうかがえます。

これらのデータから、日本の水処理関連企業は、高度な技術力と豊富な経験を活かして、世界の水問題解決に貢献しながら、着実に売上を伸ばしていることが分かります。

4. 水ビジネスの海外展開

日本の水ビジネス関連企業は、積極的に海外展開を進めています。

4-1. 海外展開の現状と課題

2019年の地域別に見た日本企業の占有率

画像によると、2019年度における日本企業の海外水処理市場の占有率は0.48%と低い水準ですが、2016年度から2019年度にかけて緩やかに上昇しています。

特に、アジア(中国除く)市場では2.37%と比較的高い占有率を示しており、今後も成長が見込まれる地域です。

また、中国や欧州、米国は占有率は低いものの売上高としてはほかの市場よりも圧倒的に大きいので日本の占有率を確保して市場を伸ばしていくと考えられます。

今後の展開

  • アジア市場へのさらなる注力: アジア地域では、経済成長に伴い水インフラ整備の需要が高まっています。日本企業は、高い技術力と信頼性を活かし、アジア市場でのプレゼンスをさらに高めることが期待されます。特に、中国以外の東南アジア諸国など、成長著しい市場への展開が重要となるでしょう。
  • 中東・アフリカ市場への進出: 水資源が乏しい中東・アフリカ地域では、水処理技術へのニーズが高まっています。日本企業は、海水淡水化技術や省エネルギー技術などを活かし、これらの市場への進出を加速させることが期待されます。
  • 技術革新とサービスの高度化: AIやIoTなどの最新技術を活用したスマート水処理システムの開発や、運転維持管理サービスの高度化などを通じて、競争力を強化していく必要があります。
  • 国際連携の強化: 国際機関や現地企業との連携を強化し、現地のニーズに合わせたソリューションを提供していくことが重要です。

5. 日本の展望「CORE JAPAN」とは?

CORE JAPANとは、2020年12月に策定された「インフラシステム海外展開戦略2025」において、「コアとなる技術・価値やプロジェクトの主導権を確保しつつ、グローバルパートナーシップを実現」 するという概念として位置づけられています。

つまり、日本が強みを持つ技術やノウハウを活かしつつ、海外企業や現地企業との連携を通じて、国際的な水ビジネス市場で存在感を高めていく戦略と言えます。

(出所)企業HPより富士経済作成

5-1.日本の将来の展望

日本の将来の展望について考察していきましょう。

技術の優位性を活かした展開

  • セラミック膜ろ過システムのような日本が強みを持つ技術をさらに磨き、それを核とした水処理ソリューションを海外に展開していくことが重要です。
  • 各国・地域の異なる水事情やニーズを的確に捉え、最適なソリューションを提供していく必要があります。

相互補完型パートナーシップの構築

  • 海外企業との連携を通じて、お互いの強みを活かし、より高度な水処理技術やサービスを提供していくことが重要です。
  • 現地企業との連携を通じて、現地の状況に精通したノウハウやネットワークを活用し、スムーズな事業展開を図る必要があります。

政府の支援

  • 政府は、インフラシステム海外展開戦略2025に基づき、資金調達や情報提供などの支援を行っています。これらの支援を積極的に活用し、海外展開を加速させることが重要です。

持続可能な水ビジネスへの取り組み

地球環境問題への関心の高まりを受け、水ビジネスにおいても、持続可能な取り組みが重要になっています。省エネルギー型水処理技術の開発、再生水の利用促進など、環境負荷を低減するための技術開発や事業展開が進んでいます。

水ビジネスは、世界の水問題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現に欠かせない重要な産業です。日本は、世界トップクラスの水処理技術や水道事業運営のノウハウを有しており、水ビジネスのリーディングカントリーとして、世界に貢献していくことが期待されています。

参考文献

  • 増田正直「中水道についての検討」『水利科学』第13巻第3号、水利科学研究所、1969年8月、39-56頁 https://tinyurl.com/28h8pb6p(参照2024-08-23)
  • 経済産業省 “令和2年度「質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業」
    水ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の方向性に関する調査” 2021年3月22日 https://tinyurl.com/24vdchup(参照2024-08-23)
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